米国IPO Q&A

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1、EGCへの優遇
2012年4月に制定されたJOBS法により、ベンチャー企業のIPO要件が緩和され資金調達が容易となり、かつ監査の除外などにより上場維持コストの削減が可能になりました。特にEGC(=Emerging Growth Company、新興成長企業)への優遇措置により、新興企業の資本市場へのアクセスが容易となりました。

EGCに該当する発行体(企業)の基準としては、
①直近の会計年度の年間総売上が10.7億ドル(USD)以下
②直近3年間に、10億ドル以上の社債(転換社債は除く)を発行していない
③浮動株式の時価総額が7億ドル以下
の3つの条件を満たす必要があります。 

このEGCに該当する場合、
⑴上場に必要な監査済み財務諸表が2期分になる
(EGCに該当しない場合は、3期分必要)
⑵会計監査人による内部統制監査が5年間免除となる
(経営者評価は必要だが、外部監査の報告書の提出は不要。)
⑶PCAOB(監査の質をチェックする公的機関)の一部ルールの適用除外
(監査人のローテーションや財務諸表に関する追加的情報を要求する規定が適用されない。)
⑷ドットフランク法の報酬開示に関する一部規定が適用除外などの優遇措置が取られます。

2、FPIへの優遇
FPI(Foreign Private Issuer、海外民間発行体)とは、発行済議決権付株式の半数以上が直接または間接的に米国非居住者に支配されている、もしくは米国外を拠点とし、米国外で経営している企業(発行体)のことです。

日本企業はこれに該当し、
⑴NASDAQとNYSEのコーポレートガバナンス規則の免除
(SEC監査委員会の要件以外のコーポレートガバナンス規則の適用免除)
⑵レギュレーションFDの適用除外
(重要な非公開情報の同時開示や迅速な公開の義務を免除)
⑶早期適用提出会社の申請条件免除
年次報告書の提出期限が基準日から120日間に延長。
⑷ドットフランク法の報酬開示に関する一部規定が適用除外
などの優遇措置を受けることが可能です。

以上のように、米国市場は世界中から優良企業を誘致するため、日本を含む海外の会社や新興企業にとって、大変有利な優遇政策が取られています。

主な準備項目としては、US-GAAPに基づいた会計監査、法務デューデリジェンス、英文の目論見書(F-1文書)作成、SEC審査への対策、SOX法(US-SOX)への対応、ロードショーの資料と財務モデルの作成、IR体制の構築、引受会社(シンジケート)との契約などです。

なお、Nasdaq 上場までの流れは、以下ご参照下さい。
「9、上場までの流れ(タイムライン)は?」

米国の上場企業の会計基準は原則、USGAAPが採用されています。
US GAAP は、米国におけるGAAP「一般的に妥当と認められている会計原則 (Generally Accepted Accounting Principles)」で、米国SEC(証券取引委員会、US Securities and Exchange Commission)により発行されている会計基準になります。

外国籍の企業の米国上場には、特例としてIFRSやNON-USGAAP(調整表付き)も認められますが、会計監査に効率的に対応するには、USGAAPを採用するのが無難です。

貴社がEGCに該当するか否かで対応が変わります。
以下がEGCの基準です。
①直近の会計年度の年間総売上が10.7億ドル(USD)以下
②直近3年間に、10億ドル以上の社債(転換社債は除く)を発行していない
③浮動株式の時価総額が7億ドル以下

上記①〜③を満たす場合、EGCに該当し、5年間は会計監査人による内部統制監査(SOX404)の適応除外となります。売上が1億ドル未満の場合は、6年目以降もこの特例は続きます。(※外部監査の報告書は不要ですが、経営者評価は必要です。)

この特例により、新興企業の負担はかなり軽減されます。

米国上場では、訴訟リスクへの対策が不可欠と考えられます。特に近年は、一人または数人が株主を代表して訴訟を起こす、証券クラスアクションが増加しており、 連邦最高裁が乱発を制限するルールを打ち出すなど対策も進んできましたが、訴訟リスクは日本より大きく、損害保険への加入が重要となります。

損害保険は、補償内容により大きく分けてSIDEA、B、Cの3つのタイプがあります。SIDEAとBは役員など個人に対する保険。Cは会社に対する保険です。

Aは会社側の支払いはなく、全て保険でカバーされ、Bは会社が一部の費用を負担し、残りは保険でカバーするタイプです。

このうち個人と会社の両方を補償できる組み合わせを選択するのが原則となり、補償内容や限度額に応じて、支払う保険料は変動します。

これは会社規模と維持費の定義にもよりますが、監査法人、弁護士、IR会社、証券取引所に支払う費用を合算して、0.5m USD程度となっております。
(これまで上場支援を行ってきた企業の平均的金額)

Nasdaq Capital Marketの上場要件は以下の通りです。

要件 資本基準 時価総額基準 利益基準
株主資本 $5 million $4 million $4 million
浮動株時価総額 $15 million $15 million $5 million
事業継続期間 2 years
時価総額 $50 million
継続事業税引前利益
(直近年度または
過去3年のうち2年)
$750,000
浮動株式数 1 million 1 million 1 million
株主数 300 300 300
マーケットメイカー
の数
3 3 3
買呼値 $4 $4 $4
または 終値 $3 $2 $3

※3つの基準があり、要件を満たすには表の数値以上を満たす必要がある。
$=USD(米ドル)、million=1000,000

主なデメリットは費用です。原則、上場までにかかる費用と上場後の維持費用が日本市場より高額になります。また訴訟リスクを回避するための保険料も日本よりも高額です。 ただしコストが掛かる分、潜在的なメリット(上場スピードや成功率、ファイナンスや事業上のアドバンテージなど)も非常に大きいため、総合的にご判断頂ければと思います。

Nasdaq 上場までのスケジュール感は、以下の通りです。

【Nasdaq上場のタイムライン】(当社実績に基づく平均的スケジュール)

日程 業務概要
第01〜11週 □キックオフミーティングと上場プラン提案
□デューデリジェンス開始、文書作成開始
  • 監査法人によるデューデリジェンス
  • 法務デューデリジェンス
  • Form S-1作成のための顧客およびサプライヤーのデューデリジェンスと電話インタビュー
第12〜22週 □F-1文書のドラフト作成を継続。市場調査会社と調整し、市場概要を作成。
□顧客、サプライヤー、法務デューデリジェンスを完了し、引受契約書および法務意見書のドラフトについて議論を行う。
第23〜24週 □SECへのF-1文書ドラフトのConfidential Filing(機密保持された提出)完了。
第25〜28週 □SECからの第一次コメント(意見書)を受領。
□ロードショーの資料や財務モデルの作成を開始。
第29〜30週 □SECの第一次コメントへの対応と修正F-1文書を提出(二回目)。
□Nasdaq(ナスダック)へ同時提出。
□ロードショーの資料や財務モデルの作成を継続。
第31〜32週 □SECから第二次コメントを受領。
□ロードショーの資料や財務モデルの作成を継続。
第33週 □SECからの第二次コメントへの回答と修正F-1文書を提出。
□ロードショーの資料と財務モデルの完成。
□アナリスト・引受人によるデューデリジェンス開始。
第34週 □SECからの第三次コメント受領。
□Nasdaqから第一次コメント受領。
□アナリスト・引受人によるデューデリジェンス完了。
第35週 □SEC及びNasdaqのコメントへの回答と修正F-1文書の提出。
第36週 □Nasdaqから第三次コメントを受領。
第37週 □Nasdaqのコメントへの回答と修正F-1文書(レッドヘリング)の提出。
□引受人の合意書、監査人の合意書、法務意見書の確認。
□F-1文書(証券登録届出書/目論見書、レッドヘリング)の発行。
□引受会社の営業チームへの会社PR
第38週 □ロードショー開始(アジア・米国)
第39週 □ニューヨークでの公募・売出の価格設定。
□最終版の証券登録届出書/目論見書(Form 424B4)を発行。
IPOによる資金調達へ

米国SEC(US Securities and Exchange Commision)は、米国証券市場における投資家保護および公正な取引の実現を目的として設立された独立の連邦政府機関です。このSECの審査をクリアすれば、米国IPOの実現は、間近となります。

SEC審査の流れは、ロードショーの少なくとも21日前までに、Form S-1あるいはF-1文書(証券登録届出書、日本における目論見書)のドラフトのConfidential Filing(機密保持された提出)が必要になります。そのドラフトの内容に基づき、不正会計やその他違法行為を焦点にレビューが行われ、コメントで指摘された部分の修正と再提出が求められます。

レビューの結果、「Effective(承諾)」となれば、FormS-1あるいはF-1文書が適時開示システムの「EDGAR(エドガー)」で公開されます。またFINRA(Financial Industry Regulatory Authority)にForm 211を提出後、マーケットメイカーとなる証券会社や投資銀行などを通じてティッカーの取得とロードショーを行うことが出来ます。

SPAC(Supecial Purpose Acquition Company、スパック)は、日本語では特別買収目的会社のことで、未公開会社の買収を目的として設立される法人です。

近年、米国ではSPACのIPOが急激に増加しており、2020年度の新規上場会社のうち、SPACが占める割合は50%を超えるなど、大きな存在となっています。

SPACは、投資経験が豊富な投資家(スポンサー)が優良な非上場会社を将来買収することを前提として設立される事業実態のない投資ビークルであり、事前にSPACの株式・ワラントを上場させ、市場から資金調達をした上で、買収活動(De-SPAC)を行う仕組みが米国で確立されました。

SPACを活用した上場のメリットとしては、
①上場プロセスが簡略化され、一般的なIPOよりも短期間で上場できる。
②De-SPACにより通常の上場プロセスを経ずに、実質的に公開市場で非上場会社の株式取引が可能となる。
③スポンサーは、公開市場を含め幅広く買収資金の調達が可能となり、流動性が担保される。

などがあります。

SPACのデメリットとしては、買収対象会社への投資の成否はスポンサーや経営陣の銘柄選別力や投資家保護の姿勢に依存する部分が大きく、従来の株式投資とは異なる特有のリスクを伴うことが挙げられます。

米国株取引に関する税率は、2022年現在、以下の通りとなります。

米国株取引に関する税率
譲渡益課税 20.315%
配当課税 源泉分離 米国10%+国内20.315%
申告分離 20.315%
総合課税 所得金額等により税率が変動

近年はNasdaq上場企業の中で、損益がマイナス(赤字)で上場する企業の方がプラス(黒字)で上場する企業より多い傾向が続いています。

これは、利益を出さずに先行投資する方が税金が低く抑えられ、かつ成長率も高くなるため合理的と言え、赤字の中身次第ですが、アメリカでは赤字上場には特段、不利な点はありません。

世界の名だたるトップ企業、Amazon(アマゾン)、TESLA(テスラ)、UBER(ウーバー)、SALESFORCE(セールスフォース)なども赤字上場を果たしており、また上場後もすぐには黒字化しませんでした。

統計的にも赤字上場会社の株価成長率は、黒字上場の企業を上回っており、将来の成長性を高めるために、戦略的に赤字を出す行為はアメリカではむしろ歓迎されています。

ティッカー(ticker symbol)とは、米国株式市場において上場企業を識別するための短いコード(シンボル)です。日本株市場の銘柄番号に相当しますが、ティッカーは通常1〜4桁のアルファベットで表記されます。ティッカーの例を挙げると、アップルはAPPL、マイクロソフトはMSFT、ズームはZMなど、会社名の略称を採用する企業が多いです。

ADR(American Depositary Receipt)は、日本語では米国預託証券と呼ばれ、米国以外で設立された企業が発行した株式の所有権を示す、米ドル建ての預かり証書です。

これはもともと米国の投資家が、アメリカ本土の証券取引所を通じて外国企業に自国通貨(USD)で投資できるように作られたものです。

ADRは裏づけとなる株式から生じる経済的権利の全てを含む株式の代替となる有価証券ですが、現地企業の株式に対するADRの所有権の比率は、ADRの銘柄毎に異なります。

ADRの発行の業務は、預託機関である銀行または信託銀行が行いますが、グローバル金融インフラと特殊なノウハウが必要なため、BNY Mellon(バンク オブ ニューヨーク メロン)、 Citi Bank (シティバンク)、Deutsche Bank(ドイツ銀行)、JPモルガン(J.P. Morgan Chase)などの世界的大手銀行が主体となります。

日本企業が米国上場を目指す場合は、外国企業の株式を米国証券取引所で直接取引することは出来ないため、ADRを発行し、上場することになります。